2016/11/28 (Mon) 雨の荒木町にて、芋鍋


四谷に縁が深い。大学の時にアルバイトしていたデザイン事務所も、その後に就職した音楽出版社も四谷にあったので。肌寒い雨降る本日、編集さんと次作の打ち合わせの後に荒木町に連れてきていただいて、嬉しくなった。この界隈、デザイン事務所の社長によく連れられ、社長とおじさん仲間たちの「岬めぐり」を延々と聞かされたっけ。出版社の仲間と飲むときはもっぱらしんみち通りの安居酒屋だったけれど、ちょっと趣味の渋い先輩に荒木町に連れてきてもらったりもした。
かつての花街の空気漂う、古き良き路地裏。好きなのに、なぜかまだ自分で来れるほどには馴染んでいない。そっけない。いまだ「連れてきてもらってちょっと嬉しい」町なのだ。
いいなぁ、このたたずまい。いつかこの界隈に馴染めるようになったら、ここを舞台に物語でも書いてみたい(今生は無理かも)。


路地の奥にひっそりたたずむこじんまりした割烹のおちあいさん。私はまるで予備知識なく連れてきてもらったので知らなかったが、ここは最後に出てくるあるモノを味わうためのお任せコースのみを供するらしい。
まず出てきたのは、枝豆煮と丸こんにゃくの煮付け。弾力あるこんにゃくの奥の奥まで煮汁が染み込んで、どこを噛んでもぷりりと旨し。


鮮度抜群の刺身に添えられたミョウガも嬉しく、冷酒が進む、話も弾む。昭和の風情を醸すこのあたりに、いま書いておる昭和ふうな物語が不思議ととけあってくる。


翡翠色が目にうつくしい焼き銀杏、


ふわりと優しいハモの蒸しシューマイ、


イカリングと小鰺の干物。このイカと衣の風味もすばらしくうんまい。ちょうどいい頃合で料理が運ばれてくるので、よけいな気を遣わずにすむのもありがたいのう。


そして、最初に書いた「あるモノ」というのが、この芋鍋なのだった。これが素朴を超えた深い味。
油揚げとネギ、茸、そして里芋。肉も魚介も入っていない。それなのに、いやそれだからか、素材の滋味にこちらがすぅぅと引き込まれていく。芋と揚げと野菜だけの鍋がこんなに美味しいなんて。ああまだまだ人生は識らぬことだらけ。


鍋の底にゆったりと沈んだ里芋を引き出せば、これがとろける、崩れる…ことはなく。ほくりと、いっそこりっとしたままで芋の歯ごたえをいきいきとつたえてくる。これはとまらない。あふあふと頬張る。
おなかもくちくなって店を出るときに、気さくなお店のご主人に「もうちょっと飲みたかったんじゃないの?」なんて声かけられた。…どうしてわかったんだろ。
しかし、えへへ、じつはこの後はさらにディープなゴールデン街へと向かったのじゃった。そこでもまた、お店の一見こわもて実は面白いお兄ちゃんたちや常連さんと「え、サガジョ?(相模女子大)私、南中!」「僕は淵野辺で」と相模原話で盛り上がってしまい、編集さん「サガジョ…」ときょとん。なんとも楽しい夜だった。
あ、これで終わらずに未完の物語のほうもがんばらねば。がんばります。NYに戻ったら。間に合うのか!?と不安をよぎらせつつも、そぼ降る雨のゴールデン街にて酔って候。

おちあい
東京都新宿区舟町3

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